「私ができるんだからあなたもできる」の罠

よく母から言われた言葉だった。母の(特に家事における)要求レベルは私にとってはけっこう高くて、要領よくこなさなければ難しいものだったけど、彼女は自分にできることだから相手にも(ちょっと考えれば)できるだろう、と当たり前のように思っていた。だから私はいっつもソコソコに家事を手伝いながら、あなたにできても私にはできないことがあるんだってよく思っていた。
2008-10-25

ただ,自分ができているんだからお前もできているはずだとか俺が苦しんでいるんだからお前も苦しめという論法は,すべての人に超人化を要求してしまいます.僕がはてブで書いた"俺が100時間残業できたのだからお前も100時間残業しろ"問題です.

母に反発する私の考え方と同じ、なはずだ。「はず」、というのは、橋下氏の生い立ちを読んだときに「苦労してる人の言う自己責任は重みが違うな」と思ったからだ。いつの間にか「私にできるんだからあなたもできるはず(できないのはやっていないからだ)」という考え方になってしまっていた。
私にはAはできないけどBは出来る、あなたにはBは出来ないけどAは出来る、そういうことをちゃんと拾って謙虚に受け止めねば。と自戒した、という話でした。

と思っていたらこういうエントリを発見。
僕は確かに負け犬だけど - 愚者の愚痴
全面的に納得。最近「なるほどー」と思ってそのまま受け入れちゃうことが多いな

id:y_rさん、というわけで、上記の通り、橋本は別に「俺が苦労したんだからお前らも苦労しろ!」的なことを言いたいわけではないと思うのですよ。

あれ、そうだったのか。確かに彼はそういう意図の発言はしていない。「俺ができたんだから、お前もやってみろよ」くらいのことは思ってるかなと思ってた。

私立高校に行けばお金がかかるのがわかっていたように、生活するのにもお金がかかるわけで。そして週休3日、1日4時間労働なんてアホな働き方では自分一人生きていくのすらままならないわけで。
これは別に、僕が騙されていたわけでも、隠されていたわけでもない、「当たり前のこと」で、みんなが知ってることだ(と思う)。

大人になればこれは当たり前のことだけれど、高校生がこういうことを考えられるかどうかは微妙かもしれない。少なくとも今回の意見交換会に出てきた高校生たちは知らなかった。(ただ、「知らない」ということを本人たちが正当化しちゃうのは不味いね。)それを考えられるのに考えようとしない、とするか、もう能力が足りなくて考えられない、なのかがわかんないので私はもやもやしてしまう。

ちなみに、橋下氏とのやりとりをここで読んだけど、

「僕は今、私立の高校に通っているんですけど、僕の家は母子家庭で、決して裕福ではなくて、僕はそんな母をこれ以上苦しめたくないので、私学助成援助を減らさないでください」と窮状を訴えた。
これに対し、橋下知事が「なぜ、公立を選ばなかったんだろう?」と質問し、「公立に入ったとしても、勉強についていけるかどうかわからないと(教師)に言われて」と高校生が答えると、「追いつこうと思えば公立に入ってもね、自分自身で追いつく努力をやれる話ではあるよね。いいものを選べば、いい値段がかかってくる」と反論した。
この橋下知事の答えに、「だから、『そこ(私立)にしか行けない』って(教師に)言われたんですよ」と泣き出す高校生の姿も見られた。

うーん。橋下さんは論理一貫していて正しいと思う。朝日新聞とのときの話と同様、論理一貫していて気持ちがいいんだけど、言い方に問題があるよなぁ。高校生に、教師が言う以外のことを調べる能力を期待していいのかわからないけれど、それに気づかなかった(または気づかせてくれる人が回りにいなかった)彼らが残念。もし気づいていたら、彼らの人生は変わっていたかしら。